1. 私立中学校には留年が「ある」。内部進学への影響も
公立中学校に留年制度はありません。
しかし、生徒様が私立中学校に在籍している場合、留年する可能性があります。
本来の「義務教育」とは、地方自治体が運営する公立中学校に子どもを通わせることを指します。(※1)
私立中学校への通学は義務教育の範囲外となるため、学校を運営している学校法人から「NO」と言われたら、中学生でも留年することになるのです。
ただし、実際に中学生が留年になる例はめったにありません。
中3から高1になるタイミングで、系列の高校に進学できなくなるパターンの方が一般的です。
①学校の定める基準に達していない場合に留年するケースがある
多くの私立中学では、次の学年に進級するためには一定の学習基準を満たすことが求められます。
学習基準には、学業成績はもちろん、出席状況や態度に関する評価も含まれることがあります。
とはいえ「基準を満たせなかったら即留年」のように杓子定規な対応を取られるケースはほぼありません。
保護者面談でそれとなく警告されたり、担任や学年主任から電話がかかってきて「このままだと危険だ」というアナウンスを受けたりするケースが一般的です。
一度警告を受けても、その後状況が改善されれば他の生徒と同じように進級できる例もあります。
②中学から高校に上がれない(進学できない)ケースもある
中学校の間はそのまま3年生まで在籍できても、系列の高校に進学できないという場合があります。
この場合も、事前に保護者面談等で「このままでは上がれませんよ」と通告されるのが一般的です。
高校への進学が認められない原因の大半は「学業成績に問題がある」「出席日数が足りない」のどちらかです。
この場合他の高校に入るために受験をしなければなりませんが、進学できない原因が不登校等による出席日数不足である場合には、進学先の選定にも慎重になる必要があるでしょう。
2. 私立中学校の留年基準は3つ!
私立中学校で進級や進学ができなくなってしまう原因は、大きく3つに分類されます。
①学業成績に問題がある
②出席日数が足りない
③素行や態度面に問題がある
実際にはほとんどのケースが①か②に当てはまるでしょう。
以下で詳しく解説します。
①学校の定期テストの点数・通知表の評価
私立中学校において、定期テストの点数や通知表の評価が一定の基準に達していない場合、生徒は留年の危機に直面することになります。
公立の場合は赤点や留年といった制度はなく、どんな状況であっても自動的に進級できるのですが、私立の場合は個々の学校法人の方針に委ねられているのです。
学校側としても、本来は入学した生徒に不利益になるような提案は望んでいません。
しかし、必要な学習内容が身についていないままでは、この先の勉強でも困るのが目に見えているため、苦渋の決断として留年を提案するのです。
②出席日数
生徒様が何らかの理由で学校に通えていない場合、留年を提案されるケースがあります。
病気療養のため欠席が続いている例もあれば、不登校になってしまって学校に行けなかったという例もあるでしょう。
出席日数不足で進級できないのは、決して罰則という側面からの措置ではなく、当該学年の学習内容が定着していないと判断されるためです。
「もう一度同じ学年をやり直して、しっかり勉強してほしい」という思いからの提案であることはぜひ覚えておいてください。
中には保健室登校やフリースクール・サポート校の利用を出席日数としてカウントしてくれる学校もあります。
出席日数に不安を抱えている保護者様は、お通いの中学校に問い合わせてみることをおすすめします。
③トラブルを起こすなど素行面の問題
私立中学校では、学業成績だけでなく子どもたちの精神面の教育も重要視されています。
そのため、ちょっと授業態度が悪かったり多少の校則違反をしたりといった程度であれば、指導で済むのが普通です。
しかし、生徒様が重大な校則違反やトラブルを何度も起こし、しかも改善の気配が見られないと判断されると留年や退学の勧告がおこなわれます。
残念ながらこの場合は留年より退学を勧められるパターンの方が多いですが、いずれにせよ相当なレアケースではあります。
3. 私立中学校を留年してしまった場合の選択肢
何らかの理由により私立中学校を留年してしまった場合、考えられる選択肢は3つあります。
・公立中学校に転校する
・留年して同じ学年をやり直す
・中学3年生の場合は外部の高校受験にチャレンジする
どの道を選んだとしてもそれぞれにメリットやデメリットがあるため、詳しく解説します。
①公立中学校に転校する
私立中学校での留年が決定した際に、公立中学校への転校を選択するご家庭は少なくありません。
日本の学校では「年齢主義」の考え方が採用されており、感覚的に留年を避けたいと考える保護者様や生徒様が多いためです。(※2)
公立中学校に転校すると、学習ペースは私立中学校時代よりゆっくりになります。
また、多くの場合は転校によって自宅と中学校が近くなり、通学にかかる時間や体力を温存できるのも特徴です。
生徒様の負担が大きく軽減されるため、学業成績や不登校といった問題が解消される可能性があります。
ただし、転入に際して学校間での調整が必要となる点や、生徒様本人が小学校時代の友人との再会を望まない可能性がある点もあります。
公立中学校への転校をする際には、慎重な準備が求められるでしょう。
②留年して同じ学年をやり直す
学校からの勧告に従って、留年を選択するご家庭もあります。
例えば病気療養などやむを得ない理由で出席日数が足りなくなってしまった場合に「きちんとその学年の内容を学びたいから」という理由で選ぶケースが多いようです。
留年という言葉からはどうしてもマイナスな印象を受けてしまいますが、実はこれは元の学年で理解しきれなかった内容を再度学び直す貴重なチャンスです。
留年という決断をしたからには、保護者様にはぜひ積極的に学習に取り組めるようサポートしていただきたいと思います。
③中学3年生の場合は外部の高校受験にチャレンジする
中学3年生の段階で学校から留年を打診されて断った場合や、系列高校への進学を断られてしまった場合には、高校受験をすることになります。
私立中学校は公立の中学校よりもカリキュラムの進みが早く、一般的な高校受験生とは学習状況が異なります。
そのため、高校受験の内容に合わせた学び直しが必要です。
都道府県によりシステムは異なりますが、学力テストによる一般入試の他に、学校の内申点を使って受ける入試もあります。
高校受験の道を選択した場合には、速やかにお住まいの地域の入試システムを調べることが重要です。
4. 私立中学校で留年しないための勉強法
私立中学校に入るまでには、保護者様も生徒様も大変な努力をしてきたはずです。
私も塾講師として、そのようなご家庭をたくさん支えてきました。
見送ってきた生徒たちには、しっかり進級・卒業してほしいと心から思っています。
病気療養などのやむを得ない事情であれば仕方がないかもしれませんが、「勉強についていけない」という理由での留年は避けたいと考えるのは当然です。
ここからは、私立中学校に入った生徒様が勉強で困らないためには、どのように勉強を進めればいいのかを解説します。
①生徒様が行うべきこと
留年を避けるために生徒様本人に行って欲しいのは、定期的な学習と、疑問を放置しないことです。
特に英語や数学といった教科は、過去に学んだ内容の上に新たな単元を積み上げていく性質を持っています。
そのため「分からない」と思ったらすぐに解決しておかないと、分からない状態がどんどん膨れ上がっていってしまうのです。
以下の4つのポイントを意識して、日々の学習に取り組んでいただきたいと思います。
(1)自分で授業の予習・復習を行う
私立中学校のカリキュラムは公立中学校よりもハイペースなのが普通です。
そのため生徒様は小学校と比べ、授業がかなり速く進んでいると感じるでしょう。
高度でハイペースな授業にしっかりついていくためには、予習・復習が非常に大切です。
特に復習に力を入れ、理解できている部分とそうでない部分の区別を明らかにすることを意識しましょう。
(2)英単語や数学の公式は反復練習して使いこなせるようにする
英語に対して不安な気持ちを抱いている私立中学生は非常に多いです。
おそらく、他の教科とは違って「中学校で初めて勉強する教科だから」という理由だと思われます。
しかし、中学校の先生たちもそれは十分に承知の上で授業を進めるため、過剰な心配は不要です。
ただ、英単語の練習はしっかり行いましょう。
読めない・書けない状態で中学校以降の英語を理解するのは非常に難しいです。
単語の読み書きをクリアしてしまえば、授業では文法の理解にエネルギーを注げるようになりますよ。
数学に関しても同様に、計算のルールや公式といった基本的な部分は繰り返し練習し、使いこなせる状態にしておくことをおすすめします。
(3)分からないことは積極的に教師に質問する
授業で分からない部分が出てきたら、積極的に学校の先生に質問しましょう。
私立中学校に入った生徒様であれば、小学校時代にも塾の先生に質問をしていたはずです。
分からない単元をそのままにしておくと、その後応用的な単元が出てきたときに完全につまずいてしまいます。
日々の疑問はこまめに解消し、自信を持って学習できる状態を保ちましょう。
(4)卒業生をチューターとして呼んでいる学校であれば積極的に活用する
私立中学校では、卒業生をチューターとして招いている場合があります。
これは放課後の自習室などにチューターが来て、在校生の質問に答えてくれるシステムです。
このようなシステムが導入されている学校に通っているのであれば、ぜひ積極的に活用しましょう。
先生に質問するのは気が引けるという遠慮がちな生徒様であっても、同じ学校で学んだ先輩たちになら話しかけやすいのではないでしょうか。
母校をチューターとして訪れるような卒業生は真面目で親切ですし、中には塾講師のアルバイトをしている人もいます。
お通いの中学校に、卒業生が質問対応に来てくれるシステムがある場合には、どんどん活用するのをおすすめします。
②保護者様にできること
保護者様にサポートしていただきたい部分は、主に生活面と学習面に分けられます。
【生活面のサポート】
①困っていることや悩んでいることがないか、生徒様とのコミュニケーションを通して探る
②スマートフォンや動画サイトとの付き合い方を話し合い、適切な管理をする
③睡眠時間など生活リズムが乱れないよう声掛けする
【学習面のサポート】
①自宅でしっかり予習・復習ができる環境づくりをする
②スタディサプリ等の学習アプリの導入を検討する
③私立中学校のカリキュラムに対応した塾や家庭教師をリサーチしておく
中学生の生徒様は反抗期に入ってしまうことも多く、日頃のコミュニケーションに困難を抱える場面もあるとは思います。
保護者様は「いざ」というときに支えてあげられるよう、バックアップの態勢を整えた上で見守ってあげましょう。
まとめ|せっかく入った私立中学校。しっかり進級・卒業しよう
私立中学校には、残念ながら留年してしまうケースが存在します。
学校の定める基準の学習ができていないと判断された場合や、出席日数が不足していると、留年や外部の高校への受験を勧められてしまうのです。
私立中学校への入学は、本来ご家庭にとって非常に大きなイベントですよね。
高い教育水準や豊かな学習環境を求めて学校選びを行い、親子でつらい受験勉強を乗り越えてきたはずです。
だからこそ、順調に学習を積み重ね、しっかりと進級や卒業をしてほしいと誰もが思っています。
毎日の小さな積み重ねが、学力と自信につながります。
主体的な予習・復習を行い、学校が提供する学習システムは積極的に活用して、しっかりと進級・卒業を目指しましょう。
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