今回お話を伺ったひと

吉田裕典(よしだひろのり)
【役職】
株式会社トモノカイ 採点アウトソーシング事業統括マネージャー
東大家庭教師友の会教育カウンセリングセンター主任アドバイザー
【経歴】
麻布中学・高等学校から、東京大学、教育学研究科大学院博士課程まで進む。
学習科学を専攻し、ICT教育やキャリア教育など、学びの可能性を開く教育の研究を深める。
家庭教師・講師としても活躍し、家庭教師で指導した生徒は100名以上。御三家・東早慶医学部などに合格実績を出す。
株式会社トモノカイでは新規事業開発を担当。学校向けサービスの開発、教育事業者向けのアウトソースサービスの開発等に従事しながら、「東大生が選んだ勉強法」シリーズの出版にも関わる。
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中学受験で成功するための親の役割とは
—「中学受験は親が重要」「親子の受験」と言われますが、吉田さんは親の役割をどう考えますか?
高校受験や大学受験と比べると、中学受験は親の関与が大きくなります。
大学受験では、生徒様自身が将来の進路を考え、志望校を決めるケースがほとんどです。
もちろん保護者の意見を参考にすることもありますが、主体は「生徒様自身」であることが多いです。
一方で、中学受験の場合、生徒様が小学生ですので、精神的にまだ未熟な部分が多く、志望校の選び方や学習計画の立て方などにおいて親のサポートが欠かせません。そのため、中学受験は「親子の受験」とも言われるのです。
中学受験に成功する親の特徴
—中学受験に成功する親には、どのような特徴・共通点がありますか。
ものすごく大きな表現をすると、「どのような結果であっても、子どもをそのまま受け入れる」という心構えで受験に臨んでいたご家庭様は、成功していたように思います。
一方で、親が子どもに勉強を教えられるか(わからない問題を解説できるかどうか)は、あまり関係ないと考えています。
実際、学校の先生やベテランの塾講師・家庭教師の間でも、「自分の子どもに教えられるか」という話題がよく出ますが、やはり「我が子にはうまく指導できない」と感じている方が多いです。
理由は「我が子だとどうしても感情的になりやすい」とかですね。
ですので、親が勉強を教えられるかどうかは、中学受験の成功にそれほど影響しないのではないかと思います。
中学受験に成功する親の声かけ・対応法
—成功しているご家庭様では、保護者様がどのような声かけや対応をしていることが多いですか。
「結果に一喜一憂しない」という対応ができているご家庭様が多かったように思います。
例えば、模試の結果が良かった場合でも、すぐに浮かれず冷静に受け止め、逆に悪い結果が出たときも「もうダメだ」「受験なんてやめてしまえ」といった極端な反応をしないことが大切です。
時には発破をかけることも必要ですが、悪い結果が出た際は、「こういう結果が出ている」ということを子どもと冷静に向き合うことが必要で、それができていたご家庭様が、最終的に成功していたように思います。
中学受験に成功する親の具体的なサポート例
—中学受験に成功したご家庭様の中で、印象的な事例はありますか。
「子どもを全力でサポートしたい」という保護者様の強い気持ちを感じた事例があり、それが特に印象に残っています。
ある学校を2回受験する予定の生徒様がいらっしゃったのですが、保護者様から「1回目の試験が終わった後、すぐにその試験の傾向や結果等を分析し、2回目に備えたい。先生の都合のいい場所・時間にこちらから出向くので、ぜひ解説してほしい。子どもは受験期間中なので、親だけで行くようにする」といったリクエストをいただきました。
「子どもが志望校に合格する確率をできる限り上げられるよう、できることは何でもしてあげたい」という保護者様の姿勢がとても印象的でした。
良好な親子関係を築いている
保護者様が積極的にサポートすることが押し付けがましくなってしまうこともありますが、このご家庭様はそうではなく、自然にサポートしているように感じました。
これは、普段の親子関係に繋がっている話だと思っています。
もし、保護者様がすべて先回りして指示を出し、子どもに過度に干渉してしまうと、子どもがプレッシャーを感じたり、押しつけがましいと感じることもあるかもしれません。
一方で、ある程度子どもの自主性や実践に任せつつ、「ここは流石にサポートしないと」という場面では親からしっかり声をかけてあげる、という関係が築けているご家庭様は、生徒様も伸び伸びと生活でき、最終的に成功するケースが多いように思います。
ですので、家庭教師としてご自宅に伺い、お父様・お母様が生徒様にどう接しているかを見ていると、「このご家庭様が成功するかどうか」はある程度察しがつくこともあります。
中学受験に失敗する親の特徴
—逆に中学受験に失敗してしまうご家庭様の特徴・共通点を教えてください。
「合格=成功」と思い込んでいる
・「偏差値が高い学校じゃないと意味がない」
・「合格さえすればなんでもいい」
こういった考え方を保護者様自身が持っていたり、生徒様にも助長するような声かけをしているご家庭様は、仮に合格しても、最終的に失敗してしまう可能性が高いと考えています。
志望校選びについても、
・「とにかく偏差値が高いところがいいので」
・「〇〇大学の系列じゃないとダメ」
といった理由で選んでいるご家庭様は、かなり危険だなと感じます。
子どもを信じられない
「親が生徒様のことを信じることができていない」というのも、かなり危険な兆候だと思っています。
実際に指導していた生徒様のケースですが、保護者様が毎回、「あなたちゃんと真面目に勉強してないんじゃない?」と言うんですね。
私が見る限り、そんなことはなかったのですが、生徒様が「いやちゃんとやってるよ」と言っても、保護者様は「全然そんなことないでしょ、あなたいつもこうなんだから」のように言ってしまうんですね。
こうした「最後には生徒様のことを信じる」ということができていないご家庭様は、その後、色々歪みが生じやすいと感じます。
成果ばかりを求める
保護者様が成果ばかりを重視してしまうと、生徒様が「答えを見ながら解くようになってしまう(カンニングしてしまう)」というケースもあります。このあたりも、保護者様の接し方によって大きく変わり、「そうした行動をとりやすい生徒様」と「そうではない生徒様」に分かれてくると感じています。
中学受験の「成功」と「失敗」の捉え方
—最後に、中学受験の「成功・失敗をどう捉えるか」について、吉田さんの考えを教えてください。
私は、「合格すれば成功、不合格なら失敗」かというと、必ずしもそうではないと考えています。
例えば、合格はしたものの「周りのレベルについていけず、深海魚になってしまった」「進学後にすぐ退学してしまった」という生徒様もいます。
逆に、「中学受験では不合格だったけれども、その後の受験等でしっかり人生を切り開いていった」という生徒様も多くいらっしゃいます。
また、たとえ学校で良い成績を取れていたとしても、生徒様が偏差値のことばかりを考えるようになり、「勉強が苦手な友達に『お前はバカだ』『お前は存在価値がない』と言うようになってしまった」としたら、それはもう失敗だと考えています。
結局のところ、中学受験の合否に関わらず、その経験を踏まえて、その後の人生でどう歩んでいけるのか。そこが、本当の「成功・失敗」を分けるポイントだと考えています。
まとめ
今回は、当会の主任アドバイザーの吉田裕典が、中学受験における保護者様の役割、成功するご家庭様の特徴について語りました。
保護者様が「偏差値が高い学校じゃないと意味がない」「合格さえすればなんでもいい」といった考え方で受験に臨むと、たとえ合格できたとしても、生徒様の人生全体のことを考えたときに、失敗に繋がってしまうこともある、というお話が非常に印象的でした。
中学受験を通して、「子どもにどんな経験を積んでほしいのか。どのように成長してほしいのか」を常に持ち続けることが、保護者様に求められる姿勢ではないでしょうか。
次回の【後編】では、「中学受験に成功する家庭教師の使い方」についてお伝えします。
▼当会では、中学受験生への指導に特化した家庭教師をご紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
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