1.公立高校で留年する人はどれくらいいるのか(令和5年度版)
留年者数(全体) | 留年者数(全日制) | 留年率(全日制) |
8,900人 | 3,618人 | 0.2% |
(参考:文部科学省調査結果)
以上から、留年する確率はかなり低いですが、公立高校でも留年する生徒様はいることがわかります。なぜ、公立高校で留年してしまうのでしょうか。
2.公立高校の留年の基準
公立高校では、主に「①成績」と「②出席日数」を基準に進級・留年を判断します。
①成績
公立高校の成績は、定期テストの点数と課題の提出状況で評価されます。特に、定期テストの点数は成績に大きく影響するため、基準点を下回る「赤点」を取ってしまうと、留年になる可能性が高くなります。
赤点の基準点は学校により異なりますが、一般的には「平均点の半分以下」を指すので、25点が目安です。ただし、赤点を取ったらすぐに留年が決まるのではなく、赤点を何度も取ったり、補習授業に出なかったりすることで、留年の可能性が極めて高くなります。
また、授業態度や課題の提出状況が悪くても、留年となる可能性があるため、注意が必要です。
②出席日数
公立高校で進級・卒業するには、学校が定める基準以上の出席日数が必要です。必要な出席日数は学校によって異なりますが、一般的には、授業日数の3分の1以上の出席が必要とされています。
ここで注意すべきことは、出席日数は教科ごとで計算される点です。同じ教科の授業ばかり欠席してしまうと、その教科の出席日数が足りなくなる可能性があります。
また、遅刻をすると「遅刻◯回で欠席1日」と計算され、出席日数に影響が出るため、学校の規則をしっかり確認しておきましょう。
3.公立高校の留年の救済措置
公立高校では、留年する生徒を出さないために、様々な救済措置を設けています。
救済措置①:単位を取得できなかった場合
「定期テストで赤点を取る」などの理由で単位が取得できなかった場合、学校から3つの救済措置を提案されることがあります。
・追試を受ける ・補習授業を受ける ・レポート課題を提出する |
課題をクリアできれば、留年を回避することができます。また、赤点を取った教科が少なければ、問題なく進級できるケースもあります。
救済措置②:出席日数が足りない場合
出席日数が足りない場合、長期休み期間の補習授業を提案されることがあります。
・「学校の定める基準を下回りそうだ」と教師が判断した時点で事前に忠告される ・夏休み、冬休みを利用した補習授業を受ける |
補習授業にきちんと参加し、授業日数の不足をカバーすることで留年を回避できます。
4.公立高校で留年が決まった後の選択肢
留年が決定してしまった場合、その後の進路について考える必要があります。どのような選択肢があるでしょうか。
進路①:公立高校に継続して在籍する
現在の高校に在籍し続けたい場合、留年した学年に留まることで、単位を取り直すことができます。
ただし、元同級生が先輩になり、一学年下の後輩が同級生となるため、学校での過ごしにくさを感じるかもしれません。また、同じカリキュラムで学習し、留年を繰り返さないかという点は考慮する必要があります。
進路②:通信制高校に転校・編入する
通信制高校は、学校から送付される教材を自宅で学習する方式の学校で、毎日の通学は不要です。
そのため、通学が難しく、出席日数不足で留年してしまった生徒様にとっては、全日制高校よりも通信制高校の方が合っている可能性があります。また、自分のペースで学習できるため、無理なく学習できるというメリットがあります。
進路③:定時制高校に転校・編入する
定時制高校は、夜間または昼間の指定された時間に、学校に登校して学習する高等学校課程です。夕方〜夜間にかけて授業が行われるため、「朝型の生活が難しく、留年してしまったけれど、学校には通いたい」と考えている生徒様には、定時制高校が合っている可能性があります。
定時制高校には、昼間に仕事をしている社会人や、高校を卒業していなかった高齢者なども在籍しており、幅広い年齢層の方と交流し、視野を広げることもできます。
進路④:高卒認定試験を受ける
高卒認定試験とは、高校卒業程度の学力を国が認定する試験のことです。受験する年度末までに、満16歳以上になっていることが受験資格で、年に2回受験できます。高卒認定試験に合格すると、高卒資格が必要な大学や、専門学校の受験が可能となります。
ただし、高卒認定試験に合格しても最終学歴は「中卒」のままです。大学や専門学校の卒業によって最終学歴が更新されるため、高卒の資格だけ欲しいという生徒様は、高校卒業をめざす方が良いでしょう。
進路⑤:就職する
高校を留年してしまうと、その分余計に学費が掛かります。また、現状のまま留年しても、進級・卒業は難しいと感じている生徒様もいるかもしれません。
その場合は、就職することも選択肢のひとつとして考えてみましょう。ただし、最終学歴が中卒での就職は求人数も少なく、労働条件が理想を下回る場合が多いです。就職して学費を貯めてからあらためて高校へ通う、働きながら通信制・定時制高校に通うなどの方法で高校卒業をめざすことも、検討してみてください。
5.公立高校で留年してしまう生徒様の特徴
留年してしまう理由は生徒様によって様々ですが、公立高校で留年してしまう生徒様には、次のような特徴があります。
①趣味に没頭している ②素行が悪い ③体調を崩しやすい |
①趣味に没頭している
趣味に没頭している生徒様は、高校より趣味を優先してしまい、成績を落とす可能性が高いです。高校生になると行動範囲が広がり、趣味も深く追及できるようになるため、より熱中しやすくなります。しかし、趣味に没頭し過ぎてしまうと、高校の出席日数が足りなくなる・成績を落とすなどして、留年する可能性があるため注意が必要です。
②素行が悪い
夜遊びや喧嘩などの非行行為だけではなく、授業態度が悪い・特定の授業で欠席を繰り返すなどの行為も素行が悪いといえます。遅刻や欠席のほかにも、校則に反する行動をして停学・退校処分になる可能性もあります。指導や処分を受けると、学校での居心地が悪くなり、中退する生徒様もいるため、後悔しないように行動を改める必要があります。
③体調を崩しやすい
体調を崩しやすいと欠席が多くなり、出席日数が足りず留年になる可能性があります。公立高校は単位制のため、病気による欠席でも、出席日数が基準を満たさなければ進級・卒業ができません。学びたい気持ちはあるけれど、体調不良で通学が難しい生徒様は、体調が回復してからの復学や、通信制高校に転校するなどの選択肢も検討してみてください。
6.公立高校で留年しないための勉強法
「留年は絶対に避けたいけれど、どのように勉強したら良いかわからない…」
「留年しそうな子どものために、どのようなサポートをすれば良い?」
このように悩んでいる生徒様や保護者様に向けて、生徒様が行うべきこと・保護者様ができることの2つの視点から、公立高校で留年しないための勉強法について解説します。
生徒様が行うべきこと
留年しないためには、定期テストで赤点を回避することが大切です。効率的に赤点を回避するためには、学校の小テストやプリントを完璧に解けるようになるまで復習するのがおすすめです。
小テストやプリントには先生が重要だと思う問題が出題されているため、定期テストでも出題される可能性が高いです。これを完璧に解けるようになれば平均点を狙えるようになり、赤点を回避することができるでしょう。
保護者様ができること
生徒様が高校を留年しそうだと分かり、保護者様が心配や不安に思うのは当然です。しかし、「勉強しなさい」「学校へ行きなさい」と、生徒様を叱ることは避けましょう。生徒様の意欲をさらに低下させてしまい、逆効果となります。
保護者様にできることは、生徒様を見守ることです。公立高校では、留年しないための様々な救済措置が設けられています。定期テストで赤点を取ったからと焦らず、生徒様自身が問題を解決する様子を見守ってみてください。
7. まとめ|公立高校で留年しないためにすべきこと
この記事では、公立高校で留年する条件や救済措置、留年後の進路、留年を回避するための勉強法について解説しました。留年は「成績」と「出席日数」を基準に判断されます。
・定期テストで赤点を取らない ・課題提出を忘れない ・授業に真面目に出席する |
この3点を守れば、高校を留年することはないでしょう。
もし定期テストで赤点を取ってしまったとしても、焦らず高校の救済措置に従い、課題をクリアしてください。学校の小テストやプリントを活用すれば、効率的に学習ができます。
【参考文献】
・文部科学省「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」
・通信制高校ナビ「高校で留年しそう!留年する基準や留年した後の選択肢とは?」
・こども教材プラス「赤点回避のコツ3選【赤点だらけ&高校留年は人生終わり?】」
・見守る子育て「高校留年の現実と正しい対処法~親が知っておいた方がいいこと~」
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